愚直・率直・廉直

　人間が死んでいくというほどばかばかしいことはありません。なぜ死んでいくのか。ただ考え方が間違っているから死んでいくのです。

　命についての考え方が間違っているから死んでいくのです。ただこれだけのことです。

　命のことを考えようとして、宗教や学問を勉強する。だから、ますます分からなくなるのです。これは全くばかなことをしているのです。

　皆様は自分で生まれたいと思って生まれてきたのではありません。生まれたいと思って生まれたのではないのですから、何かを信じなければならないとか、何かを勉強しなければならないということが、あるべきはずがないのです。

　生まれたままの命をそのまま素直に、率直に見るだけのことなのです。これが人間にはできないのです。できないようにされてしまっているのです。

　皆様の物の考え方が文明によって歪められてしまっているのです。これに気がつきさえすればいいのです。文明というもの、または教育によって、常識によって皆様の考え方が歪められているのです。だから、死ななければならないことになるのです。

　死ぬとはどういうことか。命に対する考え方が素直ではないから死ぬのです。宗教を勉強するとか、学問を勉強するということが素直ではないのです。そういう考え方が間違っているのです。

　生まれてきたままの命を率直に、素直に見れば死ななくなるのです。般若心経はそれを言っているのです。般若心経の空というのは人間が考えた学問とか常識を考えないで、素直に考えなさいと言っているのです。

　空というのはそういうことなのです。空というのはただ素直になることです。これができないのです。大人の方、ご年配の方から考えますと、素直になるということほど難しいことはないと言われるかもしれません。

　皆様が長年頭に詰め込んだ、間違った考え方を捨ててしまうだけなのです。

　命をまっすぐに見るのです。今生かされている命をすっと見るのです。これだけで命の本体が分かるのです。般若心経はそれを言っているのです。

　般若心経は素直になりなさいと言っているのでありまして、命とはどういうものかを教えているのではありません。般若心経の中心は空であって、究竟涅槃ということを言っているのです。究竟涅槃ということは命を掴まえることではない。今までの考え方を解脱することを究竟涅槃と言うのです。

　自分の考え違いを捨てることが涅槃です。命を求めるためには、まず涅槃することが第一です。自分の思いを捨てることが涅槃です。宗教とか、教育とか常識を捨てることが涅槃です。

　宗教や教育、常識が皆様を殺しているのです。このことに日本人は全然気がついていないのです。日本人は宗教を信じていないくせに、仏教信者だ、キリスト教信者だと言っているのです。親がキリスト教を信じているから、自分もキリスト教を信じている。これは本当の宗教を信じているのではないのです。

　本当の宗教の理屈を信じている人はめったにいません。いればその人は一番気の毒なお方です。自分で余計な苦労をして、だんだん根性が曲がってしまうからです。

　宗教信心ほど人間の根性をねじ曲げてしまうものはありません。宗教信心が一番悪いのです。

　イエスが死を破ったのです。日曜日はその記念日です。イエスはどうして死を破ったのか。イエスは宗教を信じなかったからです。この世の学問を信じなかっただけです。学問や宗教を信じなければ、イエスのような考え方を持つことはできるのです。従って、死を破ることができるのです。

（内容は梶原和義先生の著書からの引用）